収穫。それは、1年で最も忙しい時期。畑からボトルへ旅の中で、ガズボーンの名を冠したラベルにふさわしい品質のワインを造るには、入念な準備、正確なタイミング、気候観察、長年のノウハウが必要です。チーフ・ヴィンヤード・マネージャーのジョン・ポラードとヘッド・ワインメーカーのチャーリー・ホランドが、ガズボーンで行われる収穫の様子を説明します。
ブドウを摘み、ブドウを搾る。いたって単純なことに聞こえますが、毎年行われる収穫という儀式に必要な知識、丹念な作業、細部へのこだわりは、もっと複雑な物語を描いているようです。
収穫のために、ブドウ畑はどのように準備するのですか?
ジョン・ポラード(栽培長):スムーズな収穫のため、何週間も前から準備は始まります。畑での日々の仕事よりも、収穫にはより多くの人の手と道具が必要なんです。7月に収穫のためのクルーを手配し始めます。ケントの畑は約100人、ウェスト・サセックスは約80人。クルーの募集と宿泊施設の手配には、そのくらいの時間が必要なんです。トラクターやトレーラー、収穫用のハサミやバケツなど、すべての区画を安全かつ正確に作業するために必要なツールもすべて揃えます。
ワイナリーでは、どんな準備があるのですか?
チャーリー・ホランド(醸造長):7月、ジョンと彼のチームが収穫チームのことを考え始める頃、私たちはちょうど瓶詰めを終えた頃ですね。前年のワインをすべてセラーにしまって休ませると、ちょうど前シーズンの醸造が自然に終わりを迎えるんです。
8月に十分な休暇を取った後、醸造チームはタンク、樽、酵母、栄養素、バクテリアなど、次のヴィンテージに向けて必要なものをすべて揃えます。それからは、ひたすら掃除、掃除、掃除です。タンク、ポンプ、プレス、フィルターなどは、ブドウや果汁に触れる前に一点の曇りもなく磨き上げ、手入れをし、しっかりと使えるかテストするのです。ワイナリーチームは3倍の人数に増やし、全員がきちんとトレーニングを受けた上でその日に臨めるようにします。
収穫の開始日はどうやって予測するのですか?
ジョン: ブドウ畑では、ピノ・ノワールとピノ・ムニエの色がほぼ完全に変わってから、各クローンの区画から房のサンプルを摘んで、ワイナリーチームがテストをします。収穫までの間、このプロセスを何度何度も繰り返します。
チャーリー: ワイナリーにある高性能のラボで、果汁を分析し、熟成段階のどの位置にあるのかを把握します。そして、過去8年間のデータをもとにしたアルゴリズムから、最適な収穫日を決定します。栄養状態やpH値などに加えて、糖度の上昇と酸度の低下というもっとも重要な指標で、個々の区画の収穫開始時期を決定するんです。
ガズボーンでは、収穫にどれくらいの時間がかかりますか?
ジョン: 両方の畑とも、通常10日から12日の作業日数で収穫を終えますが、天候の関係で一気にという訳にはいきません。実際の作業は、2、3週間に渡ります。雨天時の収穫は、果汁を希釈してしまいワインの品質を低下させるため、決して行いません。収穫したブドウは、人の力が及ぶ限りできる限り早くワイナリーに運び、プレス機にかけます。
ブドウがワイナリーに到着した後は?
チャーリー: ジョンの言うとおり、プレスの速さとワインの品質には強い相関があります。なので、ブドウの房はワイナリーに到着するとすぐにプレス機に入れます。プレス機は、簡単にいうと、大きな横長の円筒の内部に柔らかな膜を張ったもので、その膜をゆっくりと膨らませることでブドウから優しく果汁を抽出します。スパークリングワインのベースとなるワインには、苦味や渋味のないクリーンでピュアな果汁が求められるので、この工程では何よりも「優しさ」が大切になります。ブドウの果皮や種に含まれるタンニンやフェノールは、赤ワインを造るときまで出番はお預けです。作業自体は機械を使った非常に効率的なものですが、高品質のワインを造るため、ブレのない厳格な作業が求められる過程です。
果汁を絞ったら、次のステップは?
チャーリー: 絞ったジュースは品質で分けられるのですが、最初の1-2%は捨てて、「キュヴェ」、つまり最高品質の果汁のプレスを開始します。その後数時間かけて、さらに圧搾と分類を繰り返し、最高品質と判断した果汁だけを残します。圧搾が終わると、絞り終わった後の果皮は畑へ戻されコンポストとなり、将来の収穫のために畑に撒かれます。こうして、また新たなヴィンテージへと続くのです......