2021年は、涼しく雨がちで、収穫の始まりも終わりも遅い難しい年でしたが、出来上がったブドウの品質にはガスボーンの全員が喜んでいます。チーフ・ヴィンヤード・マネージャーのジョン・ポラードと彼のチームの、極めて丹念、かつ巧みな栽培の賜物です。

 

幸先よく始まった冷涼なヴィンテージ

 

予想通り、4月中旬から下旬にかけての芽吹きから始まりました。開花は例年より少し遅く、6月末頃。夏を通しての気温と日照量は例年より低かったものの、8月下旬から9月上旬の日照量と気温がそれを補いました。また、降雨量が多く、ブドウの病害の面で栽培チームは気を揉みましたが、チーフ・ヴィンヤード・マネージャーのジョンは、土壌中の水分量が多くなることで、根が有機肥料の養分を吸収しやすくなるというポジティブな点もあると言います。

 

「収穫の開始は10月6日で、いつもより2週間ほど遅かった」とジョン。雨風が多く、イギリス全土で収穫が遅れたため、糖度が上がり、酸度が下がり始めるまでに、ガズボーンのチームは何度もテストとテイスティングを繰り返しました。果実の成熟のピークが収穫する完璧な瞬間を待つ間にも、経験と直感が発揮されます。

 

ジョンのチームは定期的に畑を歩き、各ブロックをテストしながら、何よりも「ブドウの成熟度合い」を優先させながら日々の収穫の計画をし、手作業で摘んでいきました。その間、片時もウェザーアプリから目を離すことはできません。ハラハラさせられることもありましたが、忍耐力と、立地と標高に恵まれているお陰で、収穫を無事に成功させることができました。

 

忍耐、辛抱、我慢……

 

ヘッドワインメーカーのチャーリー・ホランドも、悪天候の合間を縫って、収穫に最適な最高の一瞬をつかみ取るというジョンの決意に共感していました。「幸運は勇者に味方する。1カ月以上にわたる長い収穫でしたし、厳しい生育状況下で、畑の各ブロックの成熟や発育スピードは異なりました。私たちは、ただひたすらに辛抱する必要がありました。― そして、無事に報われました」。

 

将来、この2021年は、なぜガズボーンが自社畑のブドウしか使わないのかを証明する年になる、とチャーリーは言います。つまり、どんな年にも最高品質のブドウを使ってワインがつくれる、ということです。「この成果は、立ち返れば、ジョンと彼の栽培チームが一年を通じて行う、血と汗と涙の畑仕事につきます。収穫時期だけの話ではありません。彼らは本当に素晴らしい仕事をしてくれました」。

 

ポテンシャル

 

2013年や2015年と同じような経過をたどった今年の収穫を振り返り、チャーリーとローラ・リースMS(マスター・ソムリエ)は、このヴィンテージから生まれるワインのポテンシャルは非常に高いという点で意見が一致しています。「2013、2015の2つのヴィンテージは私たちが最も好きなヴィンテージで、リリース時、そして熟成を経た後でも、卓越した出来栄えでした。それは、ワインの芯となりストラクチャーとなる酸の特徴によるものが大きく、長期熟成にも期待が持てます。」

 

ファーストプレスの第一印象を、ローラはこう語ります。「気温が低く、日照量が少ない『典型的な英国の夏』の後で、ワインがこの味わいであることに興奮を覚えています。ベースワインが12月にマロラクティック発酵をした後、1月に全てのベースワインの試飲評価をする予定です。収穫時に畑から運ばれてきたブドウのクオリティを考えても、このヴィンテージのワインがタンクと樽の中でどのように成長していくのか、とても楽しみです。」

 

2021年のストーリー

 

毎年、ガズボーンはそのヴィンテージがもたらすものを讃え、ブドウの特徴を生かしたワインづくりに専念します。「ヴィンテージワインは、とある単一年のブドウの表情であり、その年がもたらすすべてを表現するものです」とローラは言います。「酸度や糖度は年によって上下しますが、ブドウのクオリティは変わりません。もちろん、私たちにはガスボーンというスタイルがあるわけですが、そのスタイルは、高い品質のブドウによって体現されるものです。複数のヴィンテージをブレンドして、ヴィンテージによる変化を受けない、一貫したスパークリングワインのコレクションをつくりたいわけではありません。毎年、同じ結果を求めているわけではないんです」。

 

チャーリーもうなずきます。「ヴィンテージとは、その年に与えられた条件・状況の全てを映し出す鏡、そのものです。2021年のイギリスの夏は涼しかったので、ストラクチャーがあり、より的確な、テロワールに正直なワインになるはずです。ヴィンテージごとのストーリー、表情、足跡…… それら全てを讃えるのが、私たちのやり方です。」

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