収穫の最前線:2022年について

最後のブドウの房が刈り取られ、ハサミは元の場所に仕舞われ、2022年の収穫が完了しました。素晴らしいブドウ、熱心な地元の収穫チーム。ワイナリーに漂う興奮は、目に見えるようでした。 

収穫とは、実にロマンチックなものです。仲間とのチームワーク。太陽の下、ブドウの樹々の間で働く長い1日。和気あいあいとした楽しいディナー。しかし、ひやりとしたイギリスの秋の寒さほど、北緯51度での収穫が他の産地のそれとは少し異なることに気づかせてくれるものはないでしょう。

9月18日のピリッと身の引き締まるような明るい朝、ケントとサセックスのガズボーンのブドウ畑には、収穫者たちが集まりました。近年の歴史の中でも最も暑く乾燥した年の一つとなった素晴らしい夏の後、このヴィンテージへの期待は高まっていました。

 

2022年の生育

「生育期はほぼ完璧でした」とは、チーフ・ヴィンヤード・マネージャーのジョン・ポラードです。気温が39度まで上がった日もありましたが、ブドウの樹々(ジョンは愛情を込めて "地中海の雑草”と呼びます)は生き生きとしていました。

「畑では暑さによるストレスが見られましたが、土壌の奥深くで、ブドウは水を得ることができました。つまり、葉は健康で果実の量も良好、ブドウ自体も病気知らずで、完璧な状態だったのです。」

収穫前の数週間、ジョンは四六時中ブドウ畑にいました。畝を歩き、ブドウを味わい、種を噛む。味わい、観察し、完璧に熟成するまで待つのです。どのブドウから収穫すべきか。どの区画があと数日待つべきか。全ての区画が丹念にチェックされていきました。

完璧な果実

ついに最初のブドウの用意が整うと、ジョンは収穫チームに合図を出しました。今年はほとんどの収穫者が地元の人たちです。経験豊富な常連もいれば、農作業の世界に初めて足を踏み入れる人もいます。2人1組で畝の両側に並んで、波を打つようにブドウの木の間を移動していきます。彼らの穏やかな会話が中断されるのは、収穫したブドウでいっぱいのコンテナをものの数分でワイナリーに運ぶため、運搬係がそばを素早く通っていく時だけです。

一房一房を丹念に吟味する作業は、手際が良くも、とても忍耐を要する作業で、見ていて飽きません。ワインのブドウは、私たちが知っているスーパーで並んでいるものとは大きく異なります。実は小さく、宝石のような輝きを放ちながら房にぎっしりと詰まっています。熟すことを拒んだ頑固な「ショルダー」ベリーは、先の細長い剪定ばさみで房の上部から引き剥がされます。

夏の天候のおかげでブドウの樹は病気知らずで、ほぼすべての房が完璧な状態だったため、収穫チームの作業は明快でした。栽培が難しいことで悪名高い果皮が薄いピノ・ノワールも、ワクワクするほど良好な状態でした。ピノ・ノワールの場合、収穫者は五感をフルに働かせてブドウの実が健全で鮮度が高いことを確認し、少しでも欠陥があればその房は落としていきます。

 

ブドウの木からタンクまで

サセックスでは延べ12日間、ケントでは13日間、収穫チームはさまざまな区画を移動しながらブドウを摘んでいきました。そして10月11日、最後の1房が収穫されました。

一方ワイナリーでも、別のチームによってテンポよく正確に作業は進められていました。ブドウをプレスし、果汁を樽やタンクに移して一次発酵用のイーストを入れていきます。収穫が終わる頃には200種類以上のベースワインができあがり、新年に醸造チームがブレンドをする時には、実に幅広い可能性を手にしているという訳なのです。

「発酵中のワインをいくつか試飲しましたが、2022年はそれぞれのワインが力強さと重み、個性とエネルギーを表現する素晴らしい年になることでしょう。ワイナリーチームは、品質の高い果実にを自ら語らせることだけに集中していました」と話すのは、マスターソムリエのローラ・リースです。

エキサイティングなプロジェクトも進行中です。チーフ・ワインメーカーのチャーリー・ホランドは、イングリッシュ・オークや他の発酵容器、さらに野生酵母を使ったワイン造りも試しています。「スティル、スパークリングの両方で、非常にポジティブな感触を得ているヴィンテージです」と、チャーリーは語ります。

 

行く年、来る年

1年で最も熱狂した大騒ぎの数週間が過ぎ、ブドウ畑は平穏を取り戻しました。葉は赤や黄金に色づき始めています。霧が朝方までブドウの樹々を覆い、秋は夏の最後の余韻を残す暖かい日々に別れを告げ始めます。

ブドウが今シーズンの仕事を終えて休息に入る頃、ワイナリーでは静かにワインづくりの錬金術が繰り広げられています。チャーリーとローラ、そしてそのチームは、2022年の栄光を味わうその日のために、これから冬を迎えるのです。

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