世界各地のワイナリーで経験を積み、2013年にヘッド・ワインメーカーとしてガスボーンに加わったチャーリー・ホランド。そのとき彼が視線の先に見ていたのは、次の二つでした。

 

まず、すべてのワインメーカーがそうであるように、新しいワインを生み出すための真っ白なキャンバス。ガズボーンはまだ若いワイナリーで、新しくエキサイティングなブランドを構築するチャンスが待っていました。

 

もう一つは、簡単に見つかる環境ではありませんが、今から使うブドウは全て、ワイナリーの畑で育てた自社栽培のブドウということでした。つまり、ワインを究極までコントロールすることができるようになります。チャーリーによれば、ガズボーンのブドウは「英国で栽培されるものの中で、常に最高クラスのものだった」といいます。「チーフ・ヴィンヤード・マネージャーのジョンは、驚くほど健康で表現力豊かな、完璧な状態のブドウをつくっていたんです。」

 

時を巻き戻すこと2000年の夏、南オーストラリアのマクラーレン・ヴェイルに話を移しましょう。ロンドンでマーケティングの学位を取得した後でこのあたりを旅していたチャーリーは、成り行きでタタチラ・ワイナリーのアシスタントをすることになりました。収穫時期には、休む間も無く24時間体制で働きました。そこで目の当たりにした造り手の情熱と、とりつかれたかのような仕事ぶりに感化されたチャーリーに、新たなキャリアが開かれました。

 

英国に戻った彼は、プランプトン・カレッジでブドウ栽培とワイン醸造の学位を取得し、主席で卒業。その後、ラングドック、ナパ、ラインガウ、ニュージーランドで実践を積みながらスキルを磨き、2009年にイーストサセックスのリッジヴューで醸造家になりました。

 

ガスボーンの魅力は?

 

自社栽培の最高品質のブドウと、ワインづくりでの自由さに加えて、チャーリーがガスボーンに惹かれた理由は、常に限界を超えて行こうとするガズボーンという会社の姿勢にありました。「ガズボーンのオーナーのアンドリュー・ウィーバー氏が、初日に私にこう言ったんです。『ベストを尽くすためには、いろいろ試してみること。失敗を恐れてはいけない。1,000Lのワインをだめにするようなことがたまには起きていないとするなら、君は自分の仕事をしていないことになる」。それはつまり、新しい挑戦をすることにコミットすることであり、正真正銘のアイデンティティを創造するということだ、と思いました。ガズボーンでは常に最高の品質だけを追求しています。簡単な方法、コストのかからない方法を求められないこの状況は、ワインメーカーにとっての夢ですね」。

 

過去の成功に甘んじないことは、チャーリーのマイ・ルールのひとつです。「完璧主義者なんです。たった1%の差で何かを良くすることができるなら、絶対にそうします。醸造家であれば、自分のワインをより良くするよう常に努めるべきです。学問を学び、建設的な分析をして、次に生かすんです」。

 

しかし、出来上がったワインを楽しむことも仕事の一部であることには違いありません。「2014年のブラン・ド・ブランはとても良い熟成をしていて、暑い年のワインにしては喜ばしいことですし、2016年には丸みがあってとても美味しい」。しかし、ブラン・ド・ノワール2016について語る彼の言葉には、個人的な思い入れと誇らしさが感じられました。「思慮深く、充実した、知的なワインです」。

 

そんなチャーリーがプライベートで、1日の終わりに家でリラックスした夜を過ごす時のワインはといえば、最近はよくできたバルベーラやボジョレーのような軽めの赤ワインだといいます。「よくできた」ワインがどんなものなのかは、またの機会にチャーリーに聞いてみましょう。

Back to Japanese language homepage
Share