収穫から瓶詰めまでの間には、様々な工程があります。そのひとつが、ベースワインの「テスト」です。毎年、醸造チームはブラインド・テイスティングを行って、すべてのベースワインを丹念に分析した上で、慎重にブレンドを決めていきます。これは、技術、経験、そしてワインのポテンシャルを想像する力を必要とする、とても魅力的なプロセスです。

色、香り、味、質感、余韻......ワイン愛好家にとって、これらはすべて「テイスティングのツールボックス」に入っている7つ道具です。ボトルの形、ラベル、背景を知ることなく、グラスの中の液体だけを頼りに、ブドウ品種、国、地域、スタイル、さらにはヴィンテージをも推測することができるのです。

ブラインド・テイスティングのワインディナーは、本当に楽しいものです。そしてこの手法は、かなり異なる形ではあるものの、ボトルに完成したワインが詰められるよりずっと前の段階で、ワイン醸造でも用いられます。

 

ブドウ品種や畑の区画に対する先入観が、判断に影響しないように

「ブラインド・テイスティングは、ベースワインを評価する上でとても重要です。ワイン醸造の初期段階におけるブラインド・テイスティングの目的は、「グラスの中身当て」のゲームとは全く違います。ここでは、特定のブドウ品種やブドウ畑の区画に対する先入観が、判断に影響しないようにすることなのです」と話すのは、ブランド・アンバサダーであり、マスター・ソムリエのローラMSです。

ブラインド・テイスティングの正攻法は、一般から始めて具体へと移行していくことです。「さまざまな流派がありますが、私はいつも最も目立つ要素から始めて、それが指し示しているであろうブドウ品種から考え始めることが好きです」とローラは言います。「グラスに鼻を突っ込んで、すぐに 『サンセールだ!』と思うのはとても危険です。そうすると、脳がサンセールに関係する形容詞ばかりを探すようになってしまい、それでは、テイスティングにおける重要なステップを一段飛ばしてしまうことになります。プロ以外の一般の方にも伝えていることですが、私はソムリエのトレーニングと試験を受けているときに、まず見た目、香り、テクスチャーといった大まかな特徴を取り、それがどこを指しているのかを考えるように教わりました。そして、自分の直感に従うことも重要です。」

構成要素となるベースワインのブラインド・テイスティングを行うことで、過去のヴィンテージや特定の区画のデータなど、外部情報による先入観を排除した上で、最終的なワインに一貫性を持たせることができるのです。

「『この畑のこの区画はいつもブラン・ド・ブランに使われる』などと考えないようにするためです」とローラ。「テイスティングの前にそのような知識があれば、香りを嗅いですぐに、そのブドウをどのブレンドに使うか、判断してしまうかもしれません」。ですが、ここでその近道は必要ないのです。

 

テイスティングノートの比較

ベースワインのテイスティング・プロセスが信頼できるものである理由は、テイスティングノートを丁寧に記録し、比較することにも起因しています。ヘッドワインメーカーのチャーリー、ローラ、ワインメーカーのハリー・ピカリングの3人は、4〜6種類のワインのフライトを、それぞれにブラインド・テイスティングします。外観、香り、味わい、全体的な印象から、酸味、渋み、テクスチャー、口当たりなど細部まで掘り下げたマトリックスを、それぞれが書き込んでいくのです。

「かなり詳しく、深く書くので、全部を記述するにはそれなりの時間がかかるんです」と、ローラも認める。「各フライトが終わったところで、3人で集まってワインについて話し合います。その後で、ワインが造られた畑、区画を開示して、チャーリーからそれぞれの区画の収穫に至るまでの様子を、詳しく聞きます」。

 

皆、ほんの少しずつ異なる感じ方をしていて、それが役に立つんです

 

「基本情報と私たちのテイスティングノートをまとめてから、同意する点、意見が異なる点を話し合います。時に、チャーリーやハリーは私が気づかなかったことに気付きますが、それらが全て、どのベースワインをどのワインに使うのかという最終判断に影響します。」

ブラインド・テイスティングと、背景となる情報を知った上での個別テイスティングという多面的なアプローチは、情熱的なワインメーカーたちのスキルと経験がなければ成立しません。「私たちは皆、それぞれの方法で貢献します。チャーリーとハリーは素晴らしいテイスターで、非常に細かなテクニカルな点にまで気がつきます。ワインメーカーとして、ワインの欠陥を見落とさない訓練も受けていますし。一方で私のテイスティングは、より消費者の視点に近いところに立ったもので、最終的なワインを想像して行うものです。全員が、ほんの少しずつ異なる感じ方をしている。そうやってそれぞれのバックグラウンドを生かして一つのものを創り上げるのは、とても面白いんです。テイスティングの日はいつも、とても勉強になります」。

 

年に一度の儀式

これらの試飲は、毎年綿密に組み上げられたスケジュールで行われます。9月下旬から10月上旬の収穫後、クリスマスまでに圧搾と一次発酵のプロセスを経ます。そして、年明けにベースワインのテイスティングが行われるのです。

ベースワインはどんな味がするのでしょうか。「酸が強いので、舌にとってはなかなかに手強い存在。私たちは何日間かに分けて試飲し、一つ一つのワインに集中できるようにしています」と語るローラ。アロマも強烈ですが、それはまだ、完成したワインから漂ってくるような類のアロマではありません。また、この時点ではアルコール度数も低く、10〜10.5%程度。まだまだ刺々しい感じがするものの、果実味や骨格についてははっきり感じられる部分もあるので、早くもこの段階から、ポテンシャルを感じることできるのです。

「その年のブドウの実の質を見極め、よく理解すること。どんなヴィンテージでも、次のステージに進むために欠かせない過程なのです」。

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