ガスボーンのワインづくりで最も重要な工程のひとつが、ブレンドです。最初は、エクセルの表とスパイダーグラフの出番。厳格なブラインド・テイスティングでベースワインを評価・記録した後、醸造チームはまず紙の上でブレンディングを開始します。

「1月の最初の3週間はまず、すべてのベースワインをブラインドで試飲することに費やします」と、ヘッドワインメーカー兼CEOのチャーリー・ホランドは語ります。「膨大な量のノートを取りながら、すべてを科学的、統計的にスコア付けしていきます。その後、グラフやチャート、ワードクラウドなど、あらゆるデータを見ながらブレンドを組み立てていくんです」。

 

納得がいくまで微調整を重ねます。一発で決まるブレンドもあれば、完璧に仕上げるのに何週間もかかるブレンドもあります

 

このデータを元に設計する最初のブレンドは、ガズボーンのブラン・ド・ブラン、ロゼ、ブリュット・リザーブという3つのワインを造り分ける上での礎となります。このブレンドを元に、チャーリーをはじめ、マスター・ソムリエのローラ・リースMSとワイン醸造チームは試飲をし、改良を加えてきます。訓練を重ねた鼻、舌、嗜好が、ブレンディングに人間的な知性をもたらす行程です。

「『ブラン・ド・ブランにはもう少し重みが必要だ』『ブリュット・リザーヴにはもう少しオークを』など、納得がいくまで微調整を重ねていきます。一発で決まるブレンドもあれば、完璧に仕上げるのに何週間もかかるブレンドもあるんです」。

醸造チームは、1日に5つのワインを4フライトづつ、1カ月ほどかけ、少しずつ進めていきます。「それ以上のテイスティングをしても、(集中力の持続や記録の関係で)ワインのニュアンスが十分に表現できなくなる恐れがあります。」コンディションを保ちながら確実に進めることで、最終的なデータとテイスティングが完全に自信が持てるものになるのです。それほどまでに、科学と直観のバランスは、微妙なものだと言えるでしょう。

 

濡れた石か、牡蠣の殻か?レモンかリンゴか?

醸造チームが探し求めるのは、果実味、ミネラル、骨格など、それぞれのワインにふさわしい特性です。「ブレンディングの最中にエクセルに戻って、必要な要素を持っていそうなベースワインを探し回ります。「『完璧!これこそが目指すスタイルだ!』と思えることもあれば、何かを取り出して別の要素を入れなければならないこともあります。本当に骨が折れ、かつ、極めて繊細な作業です」。

次の段階の分析では、ワインを表現する言葉が必要になってきます。濡れた石なのか、牡蠣の殻なのか。レモンやリンゴ寄りか、あるいは、パイナップルやタルト・タタンなのか。そして最後には、ストラクチャーとテクスチャーです。口の中に含んだときの丸み、ふくよかさ、重み、酸のバランスはどうか。余韻は長いか?これら全てのバランスを包括的に見ていくのです。

 

The Art of the Science

チームが評価したワインの全てのデータをコンピューターに入力して出てくる分析結果は、スパイダーグラフ、そして「ワード・クラウド」で視覚化されます。「チームの誰かがテイスティングコメントとして使った単語は大きく表示され、言及される回数に比例して、より大きく表示されるのです」と、チャーリーは言います。大きく表示される単語が、ワインのプロフィールを表す単語というわけです。

毎年1月に行われる澱熟成のワインを試飲するテイスティングでは、セラーで熟成されたワインの醍醐味を味わうことができます。チームは全員揃って、例えば、2013年から19年のブラン・ド・ブランをすべて試飲します。ワインがどのような進化を遂げたのか、その年特有の性質を見極め、それが畑の条件、ブドウの熟度、澱のかき混ぜ方、何による違いなのかを分析していきます。

このような絶え間ない評価によって、ヴィンテージを問わず、チームはガスボーンのワインのあるべき姿を明確に知ることができ、ガズボーンの根底に流れるスタイルを正確に、何度も再現することができるのです。

「ブレンディングには、常に直観と直感が必要ですが、科学の力は "暗闇の中を見通す "手助けになります」とチャーリーは言います。「ワインにはそれぞれの個性があり、ブレンディングでは、必ずしも科学的とはいえないことを科学的に行う必要があるんです。」

1本1本に込められた技術、熟練の技、たゆまぬ努力でつくられるワイン。ぜひお楽しみください。

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