考古学の宝の山

ガスボーンの栽培長、ジョン・ポラードは驚かなかった。「足下には、たくさんの歴史が眠っていることは知っていた。でも、ブドウ畑とワイナリーの立ち上げに忙しくて、考える余裕がなかったんだ。ガズボーンの創業者、アンドリュー・ウィーバーがこの土地を入手するより前に、ここで約500枚のアングロサクソン朝のコインの金庫が見つかったとは聞いていたけれど。」 西暦1051年から52年頃にアップルドア近郊で埋蔵されたとされるこれらのコインは、1997年に地元の金属探知隊に発見された。イングランド全土の34の造幣局でつくられたものだということらしい。

しかし、土の下にはもっと多くの宝が眠っていた。「ブドウの畑だけでも150エーカーあり、標高も様々。私たちが地元の考古学者のグループに土地の調査を依頼すると、かなりの数の物体が見つかったんだ。」

新石器時代の火打石のナイフから第二次世界大戦の弾薬まで、発見されたものの数々は、歴史上の出来事や当時の日常生活の年表をなすようだった。私たちのワイン造りにとって極めて重要な役割を果たす土から、銀貨、軍のバッジ、ボタンやバックル、弾丸、宝石、家庭用品など、多くのものが良好な状態で発掘されたのだ。

 

かつて、港だった町

「ガスボーン・エステート、そしてアップルドア周辺のエリアは、元々海洋性の地域だったんだ。」とマシュー。「ローマ帝国の時代には、アップルドアは英仏海峡を見渡せる海岸線上にあった。今でこそ8マイルほど内陸に位置しているけれど、かつて海岸線は、私たちのブドウ畑のすぐそばだったんだろう。時を経て海岸線は移動し、地形は劇的に変化してきた。海岸線の移動は潟や湿地の形成を引き起こし、アップルドアはロザー川の河口へと移動したんだ。」

西暦892年、村が港であった頃、ヴァイキングがアップルドアに上陸。アップルドアは、ケントからサセックスの海岸線に点在した五つの特権港の連合である「五港」の、サンドウィッチ港とヘイスティングス港の間にある入江の一つだった。ガズボーンで見つかったコイン、貿易用の分銅、軍用品の数々は、アップルドアがかつて港だったことの証である。

「海への近さが、ブドウの樹がよく育つ理由でもある。海が冷涼な気候を中和し、秋から冬にかけては暖かさをもたらしてくれるんだ。」とマシュー氏は解説する。「海風がロムニー湿原を通ってやってきて、ブドウの樹々の間の通気を助けるので、冷気が溜まらないんだよ。」

 

近代の歴史

この地域の近代史も、同じくらい興味深い。地元の金属探知者が、第二次世界大戦の弾薬を多数発見している。 ロムニー湿原周辺は戦時中に戦闘が盛んだった地域で、飛行場や高射場が点在していた。ガスボーンで発見された50口径のブローニング機関銃の弾丸は、この地域で空中戦に従事した戦闘機から発射されたものだという。

もっと魅力的な考古学的な発掘品としては、獅子と盾の紋章が入った16世紀のブロンズ製のリングや、ジョン王(1166年~1216年)の統治時代の銀貨などがある。その中の1枚のコインの4分の1が欠けているのは、当時は借金の支払いのためにコインを切り取るのが一般的だったからとのこと。

歴史を探りに、そして、ブドウ畑で発見された歴史的な発掘品を見に、是非ワイナリーに来て欲しい。

Back to Japanese language homepage
Share